営業活動の起点となるエリア理解の重要性
医療機器営業において、自分の担当エリアを正確に把握することは、戦略的な営業活動の第一歩です。本記事では、エリア分析に必要な「ポテンシャル表(MAP)」と「難易度表」の作成方法について詳しくご紹介いたします。
1. ポテンシャル表(MAP)の作り方
ポテンシャル表とは、自エリアにおける最大の営業機会を一枚のExcelシートにまとめたものです。
構成方法
- 縦軸:エリア内の病院
- 横軸:術式の症例数、競合品、切り替え対象となる自社製品
- 各セル:最大見込み金額(オポチュニティ)を記載
病院(縦軸)の構成
以下のような病院をターゲットとして設定いたします。
- 大学病院(研究機関を併せ持つ基幹病院)
- 総合病院(大学病院に付随するもの)
- 私立病院
- 個人専門病院(症例数が多い病院)
情報源
各都道府県の病院局情報が最も有効です。全国の病院は「2次医療圏」ごとに管理されており、その地域のニーズに応じて設営されています。病院ごとの設立目的や医療圏で担っている機能を理解することで、ターゲット病院を明確にすることが可能です。
ターゲットとなりうる病院機能
- 大学病院:研究機能を持つ基幹病院
- 地域医療支援病院:2次医療圏の中核病院
- がん拠点病院:がん治療を担う病院
- 総合・地域周産期病院:産科体制が整っている病院
横軸の構成
- 術式の症例数 情報源としては、病院ホームページ、玄関先に掲示されている医科点数別手術件数、手術件数が記載された雑誌などが有効です。
- 競合品・切り替え対象となる自社製品 単価が上がる可能性のある製品を明記します。
- セルの内容 症例数、競合品、自社製品の使用数量から算出した「獲得時の最大金額(オポチュニティ)」を記載します。
2. 難易度表の作り方
難易度表では、案件ごとの採用までの期間を把握します。病院の規模や体制により採用までの時間が異なります。
難易度(発注までの時間)
採用ルートに沿って、以下のような流れが一般的です。
- 医師による申請用紙の提出(およそ1か月前)
- 材料委員会(1~3か月に1回開催)
- 採用後、定数配置
- 販売店への発注
大病院ほど審査が厳しく、採用までの時間が長くなる傾向があります。一方、個人病院では部長の決裁で済むため、採用までの時間は短くなります。
- 消耗品の場合:医師の申請から発注まで最短で2~4か月程度
- 箱ものの場合:年1~2回の予算申請が必要で、半年以上かかる場合もあります
材料委員会の内情(参考)
Drから了解を得た後、最大の難関となるのが材料委員会です。
- 価格の確認 現行より高い場合、申請者による製品説明が求められます。
- プレゼンテーション なぜその製品が必要なのかを説明し、委員長の判断で合否が決まります。
- 委員会の開催タイミング 通常は夕方に開催されますが、手術や外来処置で参加できない場合は代理を立てる必要があります。代理が立てられない場合、次回に回されてしまいます。
- 事前の根回し 委員会通過のためには、事前の根回しが重要です。
- 価格調査 医療コンサルチームによる事前調査が行われ、同規模病院の価格がベンチマークとなります。
- 1増1減ルール 同様の製品が導入される場合、既存製品との入れ替えが求められることが多いです。物品の増加による置き場不足、不良在庫、管理の煩雑化を防ぐためです。
まとめ:市場を把握することで営業戦略が見える
市場を正しく把握することで、どこから攻めていくべきかのイメージが明確になります。営業のセオリーとしては、競合品からの入れ替えを狙うのが有効です。
- 市場がすでに形成されている
- 使用方法が熟知されている
- 採用までの難易度が低い
現行製品に対する不満を顕在化させ、その解決策として自社製品を提案することで、スムーズな導入が可能となります。
このように、市場分析は営業活動の起点であり、戦略的なアプローチを可能にする重要な工程です。ぜひご自身のエリアに応じて、ポテンシャル表と難易度表を作成してみてください。