配属先が決定し、赴任をした際に最初に取り掛かるのが数字分析である。
数字分析とは
目標金額に対して今いくら足りなくて、それを埋めるためには毎月いくらのペースで新規を積み上げていけばいいのか、を把握することで、目標達成に向けたペース配分を計算する。ここが正確でなければ、100%プランを実行できたとしても未達に終わる。じっくり椅子に座って、時間をかけてもいいので念入りに数字を算出すべきである。
方法としては逆残法を推奨する。与えられた目標数値から今の積み上げ額を計算し、足りない数字を出していく方法である。具体的なやり方を下記にて示す。
手順① 今期の予測金額を算出する
過去1年間の新規、失注案件を洗い出し、今日から期末まで1年間何もしなかったときの今期の予測金額を算出する。消耗品であれば前期に取れた案件、または失った案件の金額が継続して今期に載ってくる。箱物でも前期に進めていた予算申請が今期の採用に影響を受ける。新規ビジネスを除き、既存ビジネスでは前年からの数字が引継がれるため、ここがベースとなる。
ここでの絶対の条件がある。
それは、「起こりえる現実味のあるリスクをすべて洗い出し、それらがすべて現実なものになったときのシナリオを作成しておくこと」だ。
引き継ぐ案件には過去失った案件がある場合も多い。その損失額は今期どのくらい響いてくるのかはシビアにみて目標額は設定する。過去の案件に関しては、前任者からすべての情報を得なければならない。(追記参照)
それとこれが最も重要なポイントになるのであるが、
未達の原因は
「予想しなかったことが起きる」
これに尽きる。
営業の現場ではとにかく予想もしなかったことが毎年のように起きる。
計画を立てられるのは期初の1回だけ。ここでリスクを考慮していないと、そもそも現実離れのプランニングになる。期中の下方修正は、始まって間もなくであればぎりぎり大丈夫かもしれないが、後半に差し掛かるとなれば即脱落だ。
具体的なリスクの事例を挙げてみる。
医師の移動、診療科の撤退、自主回収など
毎年4月になると医師の定例異動が行われる。ヘビーユーザーが異動ともなると使用の現象が起き、自然と売り上げが下がってくる。医師ならまだ分かるが時として診療科の撤退まで起きえる。既存の数字が大きいビジネスであれば根底から崩れ、未達者が出てくる。まさにロシアンルーレット状態で、どの営業も敏感になる時期だ。地方の小さな病院はこれから病院の淘汰が始まるので、注意しておいた方がいい。病院側の都合であるため、こればかりは運としか言いようがないが、最後は営業の見通しが甘いと結論付けられる。また、病院側だけでなく自社側も自主回収や欠品などの問題もよく起きる。
予想が外れる
無事、製品が採用されたとしてもここが終わりではない。時として予測よりも売り上げが少なかったケースも存在する。ターゲティングの合否は採用後に分かるわけであり、ここで予定を下回るようであれば挽回は難しくなる。よってここにも保険を張っておく必要がある。
これらの最悪を想定した条件の元、次の手順に入る。
手順② 毎月のノルマを算出する
目標額から逆残し、必要な新規額を算出する。これを月ごとで割ったものが目指すべき月間のノルマとなる。
営業はロングランなので期中の誤差は必ず起きる。悲観的ではあるが、底から這い上がる形でプランを作成しないと、負けないプランは出来ない。気合で作るのではなく、リスクをベースに作るのが基本である。これがやれば100%達成できるプランである。
このほか、エクセルなどを使ってエリア内の数字を全て可視化しておくことをお勧めする。エリア担当であれば、売り上げの構成要因はすべてを把握しておかなくてはならない。数字で怖いのは不意なへこみで、それを防ぐためにも見えない数字の存在はゼロにしておきたい。
入社当時、朝から晩までセールスしているのに成績が安定しない時期があった。そんな時、先輩から教えてもらったのが数字分析である。その時分かったのは、そもそもの仕事のペースが分からず活動を行っていたことだ。この概念を知った以降は毎年安定した結果に落ち着いている。
追記:前任者問題
既存ビジネスであれば前任者からの引継ぎが行われることがほとんどだが、前任者のやる気次第で大きく外れることがある。次の赴任先でも頑張ってやっていく担当者なら、跡を濁さずに真面目に引継ぎしてもらえるが、他部署への移動や退職などで足取りが途切れる場合はまず逃げられる(法令上、引継ぎの義務はない)。またコンプライアンス上、都合の悪い案件は隠される時もある。とにかく引き出せる時期は今しかないのでここは、上司の力、会社の力を使ってでも全部を引き出すべき。スタートラインが全く変わってくる。やり方としてお勧めするのが、最低限教えてしい質問シートを作っておくことだ。相手に主導権を持たせると、漏れが多くなるので、それを回避する方法として私は行っている。